透析は腎臓を患った方の生き永らえる道です。健常人が排泄している尿を人工的に血液中から拡散の原理で透析液中に移行させ排出します。概ね500cc/min.4時間で120ℓ排出します。腹膜透析や在宅血液透析では問題になりません。なぜなら、排出源が一般家庭からですと、家庭からの排水を含む廃棄物は一般廃棄物に区分され処理せず下水道に流せます。透析施設からの排水は産業廃棄物として処理を求められる場合があります。同じ尿でも便器からの排泄だと無処理、人工腎臓の排泄だと処理が必要、というのも納得がいかないかも知れません。

 

下水道を含めた河川、湖、海などを 公共用水域と言って排水規制があります。 医療機関からの排水を公共用水域 に排水するには規制がかかります。 特定施設と言い、300床以上の病院 は規制と同時に届け出が義務です。ただし、排水 量が50㎥/日以下ですと届け出 の必要がありません。

100床程度の透析クリニックではこの値以下ですので届け出不要です。

 

人工腎臓の排水ですから尿の排出が主ですので下水道が整備されていない地方でも浄化槽処理で大方処理できます。しかし、最新の透析技術では透析液を血液中に補液するオンラインHDFなどの高度な透析が行われます。透析液の高純度化が求められ、スケール除去目的の酢酸洗浄や塩素消毒が行われ、酢酸で洗浄すると、排水のPHが下がります。これらの排水の生物処理を行う浄化槽に通すと活性汚泥と言う微生物が死んでしまいます。中和して浄化槽に入れなければなりません。しかし酢酸は酸性であると同時に有機物であり浄化槽処理可能です。よって急激なPH低下が無いように徐々に注入すれば浄化槽で処理してくれてPHも上昇します。しかし、下水道では規制を外れた排水が流入すると下水道の末端にある終末処理場にて処理出来ないため下水道に流す前で除害施設により規制値以下に処理することが義務付けられています。浄化槽で処理が可能な酢酸でも下水菅に直接流入すればPH4以下の排水となり管路の腐食が発生するため除害施設で中和しなければなりません。排水量50㎥/日以下の非特定事業場よりの下水道排水規制に、BOD、温度、SSの規制が無い所が多くあります。どうせ終末処理場に至るまでに大量の他の排水と混ざり希釈されます。PHのみ規制されます。PH5~11※とアルカリサイドには100倍緩やかであり、酸サイドに厳しい規制です。これは酸による下水道管路の腐食を防ぐ目的です。酢酸は5以下ですので処理が必要です。一方で、人工透析装置専用の 除菌洗浄剤が開発されています。例えば、サンフリーLではPH6以上で、ECO-200 ではPH11以下です。つまり下水道への放流は水質規制をクリアします。河川・海などの公共用水域への放流は PH5.8~8.6 の規制がかかりアウトですが、前述のように浄化槽での少量混合処理で対応する方法があります。

 

下水管の腐食も流入点に近い箇所であり、他の支管と合流後の管路では腐食がおこらない。むしろ管底へのヘドロ堆積での嫌気性菌による有機酸発生の腐食のリスクが高い。流入箇所の塩ビライニング鋼管採用の配慮も欲しい。いずれにせよ、腎臓病と戦う患者の日常の排泄なのだ。診療報酬にこの処理費は含まれていない。外部不経済ですね。

  • ※ 地域により若干の差あり